慶應義塾大学SFC奥田敦研究会

Prof. Atsushi OKUDA's Laboratory for Arabic Islamic Studies

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慶應義塾大学SFC研究所「イスラーム研究・ラボ」設立

イスラームとイスラーム圏に関する総合的な研究活動とその成果の発信を目指して

これまで奥田敦研究室では、イスラームとイスラーム圏について、基礎研究・地域研究・応用研究の3つの分野にわたって研究・教育・活動を行ってきた。そして2013年10月、こうした実績と幅広い海外拠点ネットワークを生かし、総合的な研究活動と研究成果の発信を行うための「イスラーム研究・ラボ」がSFC研究所内に設置された。

奥田敦
総合政策学部教授(ラボ代表者)
武藤佳恭
環境情報学部教授
廣瀬陽子
総合政策学部准教授
野村亨
総合政策学部教授
花田光世
総合政策学部教授
ジャームース・ラーウィヤ
総合政策学部訪問講師(招聘)

イスラーム基礎研究

イスラーム法におけるハラールとハラームに関する基礎概念を、聖典クルアーンや聖預言者の言行録における関係個所を読み直すとともに、この分野の重要文献に依拠しながら整理・考察する。

イスラーム地域研究

インドネシアからセネガルにまで至る奥田研のイスラーム圏におけるネットワークを駆使し、ムスリム圏全体を視野に入れ、日本国内外のハラール・ビジネス、ハラール食品の現状を調査する。

イスラーム応用研究

「ハラール・マニュアル」の作成、アラブ人学生歓迎プログラム(ASP)開催支援、リビヤ復興支援プロジェクト、アレッポ復興支援プロジェクト、一般向けイスラーム理解講座・アラビヤ語講座プロジェクトの準備、水とエネルギーの安全保障についての研究などを行う。

イスラームを方法論としたガバナンス研究とは

奥田教授は、国内外でイスラームに即したガバナンス論を展開している。ガバナンスとは「できるだけ権力を集中させず、他の誰かからの支配によらず、自発的な協力によって成り立つ、自律的な人間どうしのつながりによる」と説明し、その実現のためにイスラーム学の刷新が必要であると論じる。具体的な活動としては、2014年3月12日のモロッコのハサン2世大学における講演「イスラームを方法論としたガバナンス研究」、3月24日のヨルダン国営ラジオ「思想と文明」への出演とその内容に基づくフサイン・アッラワーシダ博士による論評「宗教を封鎖するわれわれ。宗教を探究する日本人たち」(『ドゥストゥール紙』3月27日版)、4月12日に同志社大学にて開催されたグローバル・ガバナンス学会での講演「イスラームとグローバル・ガバナンス」、5月3日の九州大学における講演「アッラーが「ひとつ」とはどういうことなのか」、9月9日のヨルダン・ザムザム研究センターでの講演「日本的視点におけるイスラーム」(『ドゥストゥール紙』9月12日版に内容掲載)などがある。

民主化運動以後のシリア内戦にかんしては、2014年4月8日の『シノドス』に掲載された「「アッラーを立法者とする法(シャリーア)」からヨーロッパ近代法への問い――ジハードをめぐって」において、信者同士が殺し合う現状が、正義と篤信のために協力し合うことを命じるイスラームの教えに対して非合法の行為であると明言し、「宗教や価値観の異なる人々に対しよい言葉とよい態度で」「よい関係を作るジハード」の重要性を説いた。10月3日の神奈川新聞『カナロコ』の「泥沼の先にあるのは―シリア情勢を奥田慶応大教授に聞く」では「イスラム国」の暴力行為とイスラームの教えとの乖離を指摘。一方で、分かち合い助け合って生きていくことの意味を見つめ直したシリア人たちがその先に作る社会に、かすかな希望を見いだせるとしている。10月26日の東京ジャーミイでの講演「イスラームとテロリズム」は、イスラームがテロリズムであるとされても仕方のない事態に対して、クルアーンとスンナに立ち返り、ムスリムとして、あるいは日本人としてどのように向き合っていくべきかを参加者全員が考える機会となった。

また、様々な分野において注目されている「ハラール」の概念についても各地で講演を行っている。2014年2月27日には名古屋モスクのムスリマを対象に「ハラール」を取り巻く現状について、11月17日には野中葉先生とともに、公益法人相模原市産業振興財団主催の「イスラーム世界を学ぶ~巨大市場イスラームマーケットに進出するには~」にて「イスラームとどう向き合うか」という講演を行った。なお、名古屋モスク訪問の際、2世ムスリムの子どもたちには、正しいイスラームを学び実践することの重要性について講話し、「ムスリムであることが僕の一番の悩みでしたが、奥田先生の話を聞いて今はムスリムであることが誇らしい」、「話を聞いてからより日頃からアッラーのことを意識するようになった」との声が聞かれた。また、7月20日には中日新聞の「なるほどランド」が取り上げた「関心高まるハラール食品」に取材協力をした。『ハヤート』3号の関連ページの情報も利用していただいた。その他、ラマダーン月についての講演を、6月に東京ジャーミイ、7月には行徳モスクにて行った。

ラマダーンナイト

2014年7月18日、慶應義塾大学湘南藤沢キャンパスにて、慶應義塾大学SFC研究所イスラーム研究・ラボと慶應義塾大学奥田敦研究会との共催で、「ラマダーンナイト」と題した講演会、ポスター展示、イフタールパーティーを実施した。資金については、日本ムスリム協会を通じ、UAEの「シェイフ・ムハンマド・ビン・ラーシド・アール・マクトゥーム人道 慈善基金」、サウジアラビヤの「アル=ムハイディブ社」からご支援をいただいた。学内外のムスリム、非ムスリムを合わせて、男性40名、女性45名の計85名が参加した。

講演会は、モロッコ人留学生によるクルアーン読誦で始まり、第13回アラブ人学生歓迎プログラム(ASP2014)の説明や、現在のシリア情勢とアレッポ復興支援プロジェクトについての説明、奥田敦教授によるラマダーン月の断食についての講演が行われた。日没の礼拝と研究会活動についてのポスター展示見学の後、キャンパスの食堂にて、アラブレストラン、インド・パキスタンレストランからのハラール料理でイフタール(斎戒明けの夕食)を楽しんだ。今年度が第1回となった本企画は、来年以降も継続的に開催される予定である。

中央アジアにおけるガバナンス研究

中央アジア地域におけるガバナンスについて、主にエネルギーおよび水資源問題の観点から角度から分析と考察を行っている。

とくに2012年からは、(独)新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)委託調査事業を活動の柱としている。2012年度はNEDO「国際エネルギー消費効率化等技術・システム実証事業/基礎事業/石炭高効率利用システム案件等形成調査事業(2012年8月~2013年3月)」に三菱総合研究所からの再委託という形で参加し、主にキルギスとウズベキスタンの電力をめぐる社会経済情勢の分析ならびに、石炭火力発電所と石炭炭鉱の実態に関する調査を実施した。2013年度は「キルギス共和国における熱供給所の石炭ボイラー更新案件発掘調査(2013年10月~2014年5月)」にも参加し、同国の熱供給所の改修等を通じた石炭の高効率化についてNEDO実証事業化を前提に調査を行った。

本年度は、国際エネルギー消費効率化等技術・システム実証事業/石炭高効率利用システム案件等形成調査事業タジキスタン、ウズベキスタンにおける熱供給所の流動層ボイラー導入プロジェクト(2014年9月~2015年2月[予定])」にて、主にタジキスタンの熱供給所の近代化事業への日本の技術の導入の可能性と、水資源を含む同国のエネルギー部門のガバナンスについて調査・分析を行っている。